中年週末ハンターの工作教室

狩猟に役立つ道具の自作事例と体験談など

フクロナガサ用カイデックスシース製作

フクロナガサと皮のシース

 GW実家に帰ったおり、遂に欲しかったフクロナガサを購入しました。


 このフクロナガサ、木製の鞘が付いてきますが、流石に猟場向きではありません。紐で腰に下げるといかにも古風なマタギっぽいいで立ちにはなるかもしれませんが、モダンなハンターには不釣り合いでしょう。


 そんなわけで、まずはレザークラフトをやっている狩猟仲間に皮の鞘を作ってもらいました。

 これはこれでよかったのですが、ある時、狩猟でズブ濡れになってしまい、乾くとやや曲がって固くなってしまいました。オイルで手入れはしたものの、歪みが残ったまま腰に取り付けた状態でナガサを差し込むと…おや?なんだか感覚が違うぞ。

 やってもーた。刃先が裏側の皮を突き破った。
このままではまずいので、たまたまあった1mmのカイデックス板を差し込んで保護することに。

 取り付け方法も改良して2mmのカイダック板とクイックホルダーを使ってベストにつけるようにしました。


ABC HOBBY カイダック板 2.0×197×330mm 71172



Takelablaze クイック ディスコネクト キット レプリカ (BHIタイプ SERPA CQCホルスター 用) サバゲー 装備 (ブラック)

 上下逆な気もしますが、基本下に引かれているのでこっちの方が爪がかかった状態を維持できて良い気がしてる。隣のラジオポーチとの干渉の点からも。


 これを見ながら猟師仲間と話をしていると「最初からそれ(カイデックス)で作った方が早いんじゃね?」と。ごもっとも。


 皮シースは取り付けベルトの縫い目も少しほつれて来てるし。製作者に言わせると修理は可能だそうですが、そのためには一旦預ける必要がある。何より猟隊での私の役目は主に突入係なので、もっとハードな仕様に耐えられるものの方がいい。
 皮シースは趣があって好きなんですが、汚れたら水と洗剤でガシガシ洗えるプラスチックは魅力。モーラナイフの優秀な点の一つでもありますね。


というわけで、前置きが長くなりましたがカイデックスシースを作ることにしました。


構想

 取り付け部品に使った2mmのカイダック板の残りがあるので、とりあえずこれで作ってみる。取り付け部品での経験から、曲げ加工は精度が出にくいので片側は完全平面にした。ナガサの形状+20mmの平板と、型取りした板の2枚構成。2枚の接続はシカゴスクリュー。これはいつでも分解して洗えるようにしたいから。間にシムを挟めば隙間調整もできるしね。


裏面材料切り出し

 まずは平板を切り取る。ナガサをカイダック板に置いてマジックでケガいたら、その10mm外側ともう10mm外側に線を引きます。黒の板に黒マジックでは見えにくいので、養生テープを貼ってその上から描き描き。外の線に沿ってアクリルカッターで切れ目を入れて折って切断。刃元から等間隔に印をつけて、10mmの線との交点にドリルで穴あけ。


表面作成

 次いで残りの材料をヒートガンで加熱してナガサに乗せて成形する。ヒートガンはAmazonで買った3000円くらいのもの。


ヒートガン elesories HG1012 ホットガン ヒートエアガン 2段階風速 無段階調温可能 50~650度 多用途ホットガン ノズル5本付き 三角スクレーパー1本付き PSE認証 二重絶縁 (本体+付属品)

 ナガサに養生テープをペタペタ貼って、切れ刃に沿って1mmの銅線を置いて刃先のクリアランスを確保。もっとも、結果的にそこまできっちり成形出来なかったので銅線は不要だったかも。100ショの木の板に貼り付けたら、カイダック板の位置を決める木枠をテープで貼って、準備完了。

 整形は専用のウレタンフォームを使えばよかったのですが、適当に買ったクッション材でやったところ、密度が足りず、あまりよくなかった(1600円もしたのに)。これはちゃんとしたやつを使いましょう。
 結局、温めては整形を何度か繰り返し、ようやくそれなりの形に整形。なお、バイスの代わりにと買った100ショのクランプ、ペンチ形状のものはほぼ役立たず、C型のものはそこそこ補助的に使えました。開口が小さすぎる以外は悪くなかったんだけどね。コメリで買ったクランプはかなり役立ちました。

 この状態で上からヒートガンを使えばもっとちゃんと成形できそうですが、そもそもフクロナガサの焼戻し温度がわからない。軸受鋼だと200℃位から硬度低下するし、万が一焼鈍しちゃったら元も子もないのでこの辺で妥協することにする。


合わせと穴あけ

 ナガサを入れた状態で2枚を合わせてテープで止めたら、成形板側にドリルで穴を開け、外形を切ってヤスリで削って整えます。100ショの紙やすりセットで十分。


 ナガサと鞘との遊びは2枚の板の間にプラ板を挟んで調整します。1mmのプラ板を細長く切って穴を開けて挟みました。これでもややきついので1.2mmや1.5mmを探して調整する予定。ワッシャーでもいいのですが、部品点数が増えるのはめんどくさいです。


ストッパーと取り付け板の製作、組み付け

 抜け防止のストッパーを作ります。曲げ加工はこうして木の板で挟んでやると失敗しにくい。

 取り付け用の板は別に製作。ナットの皿が干渉しないように2mmのスペーサを挟み、4枚重ねてシカゴスクリューで固定。こうしておくと取り付け板だけ改造や交換ができます。前側はスペーサの代わりに上で作ったストッパーレバーを挟んでいます。レバーの隠れる部分で下図のように取り付け板のネジに干渉してロックできるように、現物合わせを行いました。


 シカゴスクリューは首長さや径違いをいくつか買いました。結果的に首長さ4mmと、ホルダについてきた8mm(3セットしかついてこなかった)、後で買い足した6mmを使っています。
 4mmだけマイナスネジなので分解の際はちょっと手間です。もう一つシルバーのを買ったけど頭が厚くてイマイチ。ケチらずに長さ違いのセットを買ってしまえばよかったかも。シカゴスクリューは近所のホームセンターには売ってなく、応急の代用として木工用のティーナットの爪を伸ばして使ったりもしました。
 Amazonだと種類が多すぎてどれがいいかわからないので、マトリックスアイダさんで買った方が確実かも。


一旦完成

 完成。なかなか悪くない質感です。真っ黒なのでやや面白味には欠けます。


ちょいと改良

 スペーサを微調整しようとしてたらマトリックスアイダさんで注文した材料が届いたので、早速手を入れてみました。
 1.5mmのオレンジをスペーサにします。

 わざと1mm外にはみ出させて差し色にします。挟んで固定したら穴を開けます。

 ついでに取り付け板の間のスペーサをゴムワッシャーに変えてみました。ネジの締め具合で隙間の微調整が可能になります。前側下の穴は使わなかったので、インシュロックで短いパラコードを結んであります。絡ませてある木ネジは、ナガサを木の柄に刺した時の抜け防止用。


 改めて組み付けました。差し色のオレンジがいいアクセントになってるんじゃあないでしょうか?


余談

 最初成形がうまくいかなくてネットで調べていたら、マトリックスアイダさんのサイトに辿り着いてマニュアルを取り寄せました。届いた時にはもうほとんど出来ちゃったんですが、カイデックス以外にも読みどころのあるマニュアル(カタログ)なのでおススメです。次は1.5mmの色付きカイデックスで解体用ナイフのシースやレンジファインダー用のホルダーを作ってみようと思います。


 カイデックスは非常に面白い材料で、創作意欲をそそります。自作好きな人は是非試してみてください。