中年週末ハンターの工作教室

狩猟に役立つ道具の自作事例と体験談など

初の青首と落下事故(2019年度-第2猟期その1)


 2回目の猟期。この年、私は個人的に3つの目標を立てていた。


1.空中でカモを落とす
2.マガモを獲る
3.単独でイノシシを獲る


 実のところ、1年目は目の前に追い込んでもらったイノシシ2頭と、水面に浮いているコガモ数羽を獲っただけだった。空気銃なら良いが、やはり空中で落とすのが散弾銃の醍醐味であろう。また、カモ猟をやるからにはやはりマガモを獲りたいと考えていた。
 この年は同期の猟師が猟期前からカモがいる池をGoogle Mapなどで探して目をつけており、初日からいくつも小さな池を回った。2日目からは新人も加わり、池を回った。そのうちの一つ、小さなため池でこの年最初の猟果があった。


 そこは初日にも行っており、(初日はカモがついていなかったが、)地形は把握していた。足場のいい方から近づくと池を覗き込むような形になる。仲間2人がそこからアプローチするが、狭いので並ぶのは2人が限界である。一方池の手前に土手があり、私は土手の下で待った。池の周囲は高い木で囲まれており、飛んでくるなら土手の方しかない。待っていると発砲音があり、狙い通りオナガガモが1羽、土手の上に飛び出してきた。スキートで言うと6番か7番のプール、やや高め。落ち着いて引き金を引くと、失速したカモは藪の中に落下した。初めて空中でカモを落とし、目標の一つ目を達成した。なお、このオナガガモは一緒にいた仲間に譲った。(オナガガモは皮が固いと聞きます。海ガモより美味いが、マガモ/カルガモには劣るらしい。)


初の青首
 その後も休日には2〜3人でMapで見つけた池を巡っていた。そんなある日、いつも行っているダム湖でコガモとマガモを発見。仲間に反対側から追い立ててもらうと、私が潜んでいた方に飛んできた。方向は4番マークだが低い位置にある水面すれすれを飛んできたため撃ち下ろしとなる。飛んでくるカモに空中で追い越しざまに引き金を引く。轟音と共に浮力を失ったカモが斜めに落下する瞬間は爽快で、カモ撃ちが楽しいと思える瞬間である。そんな感じで、この年2つめの目標をあっさり達成してしまった。


 生き物の命を奪う瞬間を楽しいと思うことに批判的な意見もあるだろう。別に綺麗事は言わない。趣味で楽しんでやっていることに変わりはない。もちろん獲ったものはきちんと消費するし、駆除でもなければ食べもしない鳥獣の命を無意味に奪ったりはしない。また、命を奪う際にはなるべく苦しませないように配慮している。
 それでも執拗にやれ残酷だとか、命を弄んでいるなどとさも高尚な言い回しで難癖をつけて来る見知らぬ清廉潔白な御聖人様が世の中にはいるようだ。幸い出会ったことはなく、こればかりはどうせ話が通じないので今後も関わり合いにならないことを祈るばかりだ。


 この年は記録的な雪不足であった為、大物猟はあまり行われず、休日にはほとんどカモ撃ちに行っていた。1発の散弾で2羽のコガモを落としたこともあった。この年は実に200発以上の散弾を消費し、無許可譲受けで購入できる300発では不足するかと心配になったものだ。

コガモ半身の燻製。娘に聞くと、コガモが一番好きらしい。確かに美味いよ。でも肉少なくて手間対肉効率が悪いんだよね。


ジムニー落下事故
 しかし、第2猟期最大の出来事はこうした猟果ではなかった。
 年が明けたある日、いつものように狩猟仲間と池や川を巡っていた。川沿いの猟場でコガモの群れを発見し、車で回り込むことにした。急いでジムニーに乗り込んで走らせる。そして河原に降りる道に向かってハンドルを切った。………しかし、そこに道はなかった。
「ウソーッ!?」嘘ではないがとても現実とは思えない光景が眼前に広がった。
 下り坂があったのはその少し先で、道だと思って曲がった先は土砂捨て場か雪の捨て場か、写真のような3〜4mの壁。東京ディズニーシーにあるインディージョーンズのアトラクションのように、ジムニーは空中に飛び出し、そのまま垂直に落下した。

 サイコロのように前面、上面、右側面が順に下になるように転がり、最後に底面を下に180度回頭した姿勢で静止した。まるでチョロQのように起き上がったのである。かかったままのエンジンを一度切り、外に出ようとしたが、運転席側のドアは歪んで開かなかったため、助手席から車外に出た。しばらく呆然としていたが、落ち着くと状況を確認した。
 猟銃はケースに入っていて無事だったが、箱のまま積んであった散弾や色々な荷物が車内を飛び跳ねて散らかっていた。(そのうちの一部は頭に当たっていたらしい。後から少し痛む部分があった。)ジムニーは窓が割れ、天井は凹み、フェンダーが歪んでタイヤに干渉していたが、奇跡的に自走が可能であった。
 しかし本当の奇跡はドライバー、つまり私がほぼ無傷で済んだことだろう。その後ジムニーは廃車にせざるを得なかったが、自分を守ってくれたことには本当に感謝している。JA11ジムニー、本当に素晴らしい車だった。


 猟師仲間にも心配をかけた。当然狩猟を続けるどころではないので、仲間に見守られながらノロノロと自走するジムニーで帰宅した。その日のうちに警察と保険会社に連絡し、落下した敷地の管理会社には次の日に連絡した。
 ほぼ無傷とは言ったが、この後半年間にわたり上腕の痛みに悩まされた。原因は事故の衝撃で頚椎を痛めたことで、妻からは「カモの呪い」と言われた。


 安全が第一です。狩猟中の事故には気をつけましょう。